成長


「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」

これは、カナダ・ケベック州出身の精神科医で心理学者のエリック・バーンの有名な言葉です。

過去と未来をそれぞれ比較の対象に加えた名言ですが、簡潔に言えば「他人は変えようとしても変えられないけれど、自分は変わろうとすれば変われる」と読めます。

このロジックを採用や教育の場面についてあてはめてみるとこんなことが言えると思います。

募集を告知し、会社にとって理想的な応募者(他人)に応募して欲しいと念じても、応募者の心は変えられないので、希望通りの人を集めたいという願いはかないません。
会社(自分)が出来ることは、募集の告知を知って多くの応募者が集まってくるような会社に変わっていくことだけなのです。
また、採用した新人を教育するとき「成長してくれ」と伝え、願うだけでは新人は成長しないことは明らかです。本人が「この会社で働いて成長したい」と思えるような職場環境や労働条件を提供して、新人自らが変わりたいと思わなければ変わらないのです。

概念的な言い回しで、ちょっとわかりにくかったかもしれませんが、私たちはエリック・バーンの
「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる。」
という言葉を理解しながらも
「他人を変えよう、他人も変えられる」
と勘違いして行動をしているような気がします。

今月は少し長めの夏休みを取る方も多いと思います。
のんびり休んでリフレッシュできましたら、このあたりを見直しされてはいかがでしょう。


先日のことですが、開業前の勤務先の会長のことを思い出すことがありました。
今回はその会長の思い出話で一言。

とにかく自分にも部下にも厳しい人で、人前で話をされる折には、自分に与えられた役割のために、徹底的に準備や練習を重ねて、最善を尽くす姿勢で臨まれていました。
自分の話はすべて暗記をし、『原稿を眺めながら』という話し方は絶対されなかったことを思いだします。

私は会長の直属の部下ではありませんでしたが、『担当部の責任者として精一杯仕事をしています』と、自信あり気な顔をしていても、足りないところを簡単に見破って厳しく注意や指導をして戴きました。
しかし、不満に感じなかったのは、私の成長を考えた公正で公平な注意、指導だったからです。

さて、そんな私も今では事務所の代表となり、人前で話をし、スタッフを指導する機会が出てきました。
しかし、私には代表であるという自覚はあるのか。
スタッフの成長を思って厳しい注意や指導をしているのか。
自信のある答えは出てきません。

また会長は社外の方には、常に温厚で誠実な態度で臨まれていましたので、「あなたの会社の会長さんは、素晴らしい方ですね。」と、社外の方から何度もお褒めの言葉を戴き嬉しかった記憶があります。

さて、私は事務所の外の方々に対して、温厚で誠実な姿勢で臨んでいるのでしょうか。
これについては、更に自信がありません。
もっと努力しなければ・・・


同じ時代に生きている多くの経営者の中で、著書を読み、そのお考え方を私の基本指針にしている方が「塚越寛様」(伊那食品工業会長)です。
塚越会長の著書にある「自分を律するための心得10か条」を拝見すると、自分自身が、今、そして今後進んでいくときに常に心得ておかなければならないことが見えるような気がします。

今回は、塚越会長の著書【幸せになる生き方、働き方】の中の10か条から以下の二つをご紹介します。

  • 変化し得る者だけが生き残れるという自然界の法則は、企業経営にも通じることを知り、すべてにバランスをとりながら常に変革すること。
  • 人間社会における企業の真の目的は、雇用機会を創ることにより、快適で豊かな社会を作ることであり、成長も利益もそのための手段であることを知ること。

実は、この事務所通信の平成24年新年号の矢島のひとことは「成長する者だけが生き残る」というテーマでした。
3年前に「変化し成長し続けなければ生き残れない」と書いておきながら、私はこの3年間、常に変革を心掛けていたのかと自問自答しています。
また、平成22年から、私の事務所で一緒に仕事するスタッフを雇用してきましたが、塚越会長のお考えのように雇用機会の創造を常に意識していたかというと、胸を張れるだけの自信はありません。

『新年早々、反省ばかりか・・・』と、御叱りを受けるかもしれませんが、一日でも早く顧みれば、反省は次への足掛かりになり、逆に同じ反省でも、遅くなれば後悔ばかりになりかねません。

今年は、【変革による飛躍】と【雇用機会の創造】をテーマに進みたいと思っています。


最近、目にしたり耳にすることが少なくなった気がしているのが、ISO【国際標準化機構、International Organization for Standardization、略称ISO(アイソ、イソ、アイエスオー))】という言葉。

一時は多くの企業でISO9001取得企業だとか環境のISO14000取得に着手という話に触れることが今よりも多かった気がしますがいかがでしょう。

ISOの取得については、『必要書類が多すぎて仕事が遅くなる』とか、『取得手続きの煩雑さに見合った効果がない』とか、かなり批判的な意見も多かったと思います。

この国際標準規格を取得すること自体の損得は別にして、また取得という結果が遠い先の目標の話だとしても、各企業で実際に行っている様々な業務や作業を、ISOの考え方を参考にして標準化することは、明らかな業績改善を生むと思います。

私自身、業務の手順が厳密に定められた企業で社会人のスタートを切り、その後の転職先ではISOの取得に関わり、今また法規制に縛られた書類を作成代行する仕事を生業にしていますので、作業を標準化することで成果が上がった数多くの事例に立ち会ってきました。

振返ると、現在お取引いただいているお客様の事業所で、作業の標準化を意識して実践されているところは半数にも満たないと思います。

経済が沈滞化している今こそ業務や作業の標準化による採算性向上を提案し、お取引先様の成長を支援したいと思っています。


つい最近送られてきたあるDMの中の【問題意識を持って仕事をしよう】というフレーズが目に留まりました。というのは、その直前に参加した研修会で受講前に出された

[仕事上の関心事(何とかしなければならないこと、気になっていること、おかしいと感じていること)をいくつでも構いませんので、列記してきてください]

という事前課題に取り組んだところ、次から次へと私の関心事が湧き出てきたからです。

何とかしなければならないと思っていることが、こんなにあるのか…

気になっていることもこんなにあるのか…

『おかしい』と感じていることもこんなにたくさん…(-_-)フウ

わが事務所はこんな問題だらけの事務所なのかと珍しく落ち込んでいたのです。

しかし、先のDMには、次のような言葉が添えられていました。

【目標が高くないと問題意識は生まれない】

確かに『現状維持をヨシとしない』というスタンスは開業以来継続しています。

常に目標を持ち、より多くのお客様へより良いサービスの提供を目標にしてきました。

『だから問題が山のように出てくるんだ』と一人で勝手に納得して一安心 (^_^)v

『目標を高くするから、問題が出くるし、やらなければならないことが見えてくる』

問題が多いことは、大変なことなのですが、これからも敢えて目標を高く掲げ、問題意識を維持し続けたいと思っています。

 


『無難な人材はいらない』7月に東京で開催された統計学に関するセミナーに参加した際、講師の一人楽天の執行役員の方が口にされた言葉です。

経済成長が右肩上がりであった時代なら、無難な考え方をする人材の使い道もありましたが、経済が安定し、あるいは右肩下がりの時代にあっては、リスクを意識し何事にも挑戦する人材でなければ、企業は必要としないという話でした。

無論、様々なタイプの人材を揃えて日々の企業活動に取り組むわけですから、『無難な考え方』をする人材が全く必要とされなくなったわけではありませんが、時代の先端を突き進む企業の経営者の言葉には、強く心を揺さぶられました。

私自身は日頃から、個々の企業の経営において、企業を取り巻く環境全体を見て判断する無難なマクロ的な見方よりも、自社の持っている特性や潜在能力におけるリスクを把握するミクロの見方をすべきだと申し上げております。

例えば、同じ地域の同業他社の景気動向を分析し、それをモノサシにして自社の状況を評価し、今後の事業展開を検討することは、一見無難な方法のように思えますが、少しの間他社に差を付けることは出来ても、継続的に成長し続けるようなアイデアにはつながらないと思うのです。

企業の成長には人材育成は欠かせませんが、育成しようとする人材の素養として、何事にも『無難であろう』とする潜在意識を持つ人材は、育成しにくいのではないでしょうか。そういった視点で見ると、採用時に評価する社会人経験の長さはマイナス要因かもしれません。採用に際し、敢えて『未経験者限定募集』を掲げる企業も最近では珍しくないようです。