雇用契約を終了するとき、労働者が申し出れば「退職」、会社が申し渡すと「解雇」となります。
突然の申出や申し渡しによって、双方が気まずい思いをすることがありますし、時には争いに至ることもあります。
しかし、話し合いを重ねるなどして、雇用契約の終了が円満に解決するケースも多くあります。
気まずく思ったり争いに至るケースと円満に事が運ぶケースでは何が違うのでしょうか。
事案ごとに理由はありますから、「これだ」という決定的なものはありませんが、数多くの「退職」と「解雇」に立ち会ってきた者として思うのは、『上手くいくかどうかは、相手の立場を思う気持ちがどの程度あるか』ということなのではないかと思います。
例えば、退職を申し出る労働者が『早目に申し出て、出来るだけ会社に迷惑を掛けないようにしよう』という思いで申し出れば、それは会社に伝わると思います。
また、会社も『早目に知らせて次の仕事を見つけられるよう支援してあげよう』との思いで申し渡せば、例え解雇であっても、解雇するに至った理由に理解を示してくれると思いますし、争いに至ることは意外に少ないと思います。
中小零細企業における解雇は、業務と本人の適性が合わないケースが多いものです。
その原因の一つは、大企業に比べ中小零細企業では配置転換が難しいためですが、そうであるならば雇用契約の「終了」とは、新しい仕事に出会える「チャンス」であり、新たな可能性への「スタート」と言えるかもしれません。
「試用期間はお試し期間だから、解雇しても問題ないですよね?」というご質問をよくいただきます。
また、試用期間に限らず「お給料の30日分払えば解雇しても問題ないんですよね?」というご質問もあります。
一見問題ないように思いますが、この認識は、後々大きなトラブルに発展する可能性を孕んでいます。
今回は「試用期間中の解雇」を取り上げます。
試用期間とは・・・
多くの事業所で、入社した従業員の適正などを判断するために「試用期間」の仕組みを取り入れています。
試用期間の長さについて、基準を定めた規定はありませんが、あまり長い期間を定めると、民法の公序良俗違反として認められない場合があります。
通常は2~3カ月、長くても6カ月以内で定めるのが良いでしょう。
今日からよろしくお願いします!
試用期間6カ月ね。がんばってね。
4か月後
新入社員を入れてみたものの、なんかあんまり合わないなぁ。
試用期間ということは、お試し期間なんだから、本採用しなくても、問題ないでしょう。
試用期間の後、本採用にしない、といっても、既に雇っている以上、それは「採用」の問題ではなく、解雇の問題になります!
じゃぁ、労働基準法の解雇予告手当30日分を払えばいいでしょ?
出番じゃ! 説明しよう
解雇1つとっても色々な法律が絡むんじゃ
「解雇」となると、労働契約法によって「客観的合理性」と「社会的相当性」の2つがなければ法的に無効になります。
過去の判例において、試用期間中の解雇が認められた事由としては以下があります。
労働基準法で問題がなくても、他の法律によって解雇が無効になる可能性は十分にあります。
後々大きなトラブルに発展しますので慎重な判断が必要です。
最近、解雇に関するご相談は、珍しくありません。
大半は経営者からのご相談で、社会人として許されない行動や発言、犯罪に準ずる行為など明確な懲戒事由がある場合は、事実確認の上で解雇の手順についてお話ししています。
しかし、ご相談の中には仕事が遅い、仕事の覚えが悪い、会社のルールを守らないなどの理由による解雇の相談もあります。
こうしたケースで解雇を選択したいというご相談に際して、「その人を解雇する」という考えに至るまでに、どの程度「その人を会社内で活用する」ことを検討されたのか、許されることなら、じっくり時間を掛けてお話ししてみたいと思うことがしばしばあります。
今後、長期にわたって労働力人口は減少しますから、労働市場は売り手市場が続きます。
つまり、多くの就職希望者の中から、厳正に選考して優秀な人材を採用するという理想的な採用活動は、求人倍率の高いこの地域ではほぼ無理だと考えて間違いありません。
また、「中途採用≒即戦力」という考え方は間違っていないと思いますが、何も教えなくても期待以上の働きをしてくれる人が、世の中に余っているはずはありません。
これからの時代、経営者の期待以上の能力を発揮してくれる人を採用できることなどありえないと潔くあきらめて戴き、「雇った人をいかに教育して能力を開花させ、良い仕事をしてもらうか」これを考え実践することが経営者の腕の見せ所だと思います。