以前勤務していた製造業の会社には、天然の木材を使って製品を作る工程がありました。
木材は種類(樹種といいます)によって色や肌触りが異なりますが、同じ樹種であっても、色や木目が全く同じものはありません。

言い換えればすべてが異なるモノなのです。

そこで天然の木材を使う職場には【良品または不良品となる品質の限度を示した見本】として【限度見本】というものがあり、これを基準に検査員が検査をしていました。

こうした人の感覚による良品、不良品の見定めを官能検査と言いますが、この検査を行うためには【限度見本】は欠かすことのできないものでした。

さて、最近テレビや新聞、週刊誌で話題になった「職場におけるパワーハラスメント」の話はご存知でしょうか。
素晴らしい学歴、経歴を持つ国会議員の先生が大声を上げて運転中の部下の秘書を叱責していたあの話です。

職場のパワーハラスメントとは、『同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為』と定義されています。

しかし、『職場での優位性』とは具体的にはどのようなことなのか、『業務の適正な範囲』の適正な範囲とは、どの程度のことを示すものなのか。
「職場のパワーハラスメント」に関する問題は、私たち社会保険労務士の守備範囲の案件になるのですが、こういう人に関わる問題の中で、極めて抽象的な問題をわかりやすい形で説明することは、非常に難しく悩ましい問題の一つでした。

ところが、最新の録音機器を利用して生々しい現場の音声がテレビで流れるというチャンスが到来しました。
「職場のパワーハラスメント」とは、例えばこういうことですと説明する格好の【限度見本】が見つかったと感じました。