リクルートキャリア(以下、リクナビと略す)が就活生の内定辞退率を大手企業に販売した問題は、日経新聞が8月に一面報道してから2カ月が経とうとしている。
30年以上労務に携わってきた一人として大変重大な問題だと思うのだが、新聞やテレビでの報道はすこぶる低調な気がする。
問題視される企業が双方ともに日本を代表する大企業であり、とりわけ広告料では超上得意先ばかりだから、一般国民に正しい情報を知らせる『ペンは剣よりも・・・』という報道の役割も、つい忘れたくなるのかもしれない。
情報が少ないので私が勘違いしているかもしれないが、今回はこの問題の発生原因に遡って考えてみたい。

さて、リクナビが「内定辞退率」という商品を提供出来たとしても、それを買う相手がいなければ市場は成立しない。
噂ではあるが今回のサービスの値段は400~500万円程度と言われているところをみると、『需要と供給』はバランスし価格は成立していたようである。
無論、名前の挙がった日本を代表する超大手企業(※38社程度と言われる)では、400~500万円は採用担当者が稟議書を書いて決済を仰がなければならない金額ではないし、リクナビにしても、今回のサービスによる売り上げは、トップの謝罪会見を伴うリスクに見合うものとは思えない。

つまり、売り手も買い手も『少額』であったがゆえに十分な検討もせず、担当者間の話し合い程度で始まったことだったのかもしれない。

今回の事件は、提供者である就活生たちの様々なデータが、リクナビのAIによって「内定辞退率」という形に算出され、彼らが就職を検討していた企業に内緒で売られていたことを知らされていなかったという話である。
売り手も買い手も冷静な視点で眺めて見れば、会社の信用信頼に傷をつけてしまう大きなリスクの存在に気付くことが出来ただろうと思う。

(以下、12月号に続く)